NC700Sを車が駐車している端っこに止めた。当然このアングルが撮りたかったからだ。他のバイクは、対岸の姫鶴荘の前に止めている。展望台側に止めているのは私だけだ。邪魔にはならないようなるべく端に寄せた。
3年前に来たときには、冷たい雨で、みぞれ混りかと思うほど寒くて、ガスで何も見えなかった。
ただ、期待したほど気持ちよくない。確かに気温は低いようだが、空にはなにやら黒い雲がわいていて、どうも湿度が高いのだろうか。
私が汗まみれで、べたべたして、それで気持ち悪いのか。
からっとして、爽やかなのを想像したのでちょっと勝手が違う。
東の方向を見ると、沢山のテントが立っていた。ここで寝泊まりする人もいるのだろう。キャンプ好きならば、いいかもしれない。
こちらが、姫鶴荘だ。バイクが止まっているのが見える。
その右横に、ソフトクリームを販売していた。先ほど昼食を食べてすでに2時間くらい経っている。おやつに丁度いい時間だ。
値段は300円。種類はバニラだけだった。なかなかいい味だった。
案内板が立っていた。ほるほど、愛媛と高知の県境なのだ。今いる姫鶴平は愛媛県か。
そして、東の方は高知県だったのか。と初めて知った。実際の四国カルストと言えるのは、この姫鶴平から、東の天狗荘までで、それまではたんなる山道になるのだろう。
実際景色は、いままでと、ここからとは全く違う。ここの景色の動画をアップしたので見て欲しい。
せっかくなので、姫鶴荘の売店に入ってみたが、食堂は中止しているらしい。時間帯で中止しているのか? 土産はお菓子がほとんどで、欲しいものもなかったのでそのまま店を出た。
東の空がさらに暗くなってきた。雨など降らなければ良いが。
気温は、26度。下界に比べたら10度近くも低い。もっと、気持ちよくて良いはずなのだが。
そこから、NC700Sに乗って東に行ってみることにした。
道は狭い。車の離合は難しい。所々で幅が広く取ってあって離合できるようになっていた。右に何台かの風車が立っていた。しかし、全く回っていない。実際風は全く吹いていなかった。
少し進んだところ。いかにもカルストらしく、白い石灰岩が羊の群れのように散在している。もう、一面そんな景色だ。高い木もなくて、見晴らしも良い。
だんだんと高度が上がっていく。こんな急なところにも牛がいる。
道路のすぐ脇までやってくるのだ。まったく、車やバイクを気にしていない。
カメラを向けようが、手を伸ばそうが知らんぷりだ。道路に入ってこられないように柵がしてあるが、牛が本気になったら簡単に壊れそうな感じがする。そのおかげで牛がよく見えるのだが。
一番高い所から写真を撮ろうとしたが、すでに雲がやってきていてだんだん景色が見えにくくなっていた。
そのとき撮った写真がこれだ。左側から本当にゆっくりと黒い雲が移動してきていた。つまり、南側から北側に黒い雲が移動していると言うことだ。
さらに進むと、驚くほど牛が道路脇にたむろしていた。観光客がえさでもやっているのだろうか。
東端には、天狗荘らしき建物が見えた。今回は、その近くには寄らなかった。なんだか、ゆっくりと動く雲が気になっていた。
ここで、今日の宿を目的地にセットした。八幡浜市から東に15kmほど入ったところが今日の宿だ。ここからだと、80キロ程走ることになる。意外に距離がある。
だが、通行止めになっていた。仕方ないので、真っずくにいくしかなかった。
その県道34号線は、今回初めて走ったが、とにかく細くて、くねくねとしていて全く速度が上がらない。ナビも、林道に行かなかったので、リルートしてくれたが、距離が90kmに増えていた。
途中で、数台のミニバンに出くわした。細いくねくね道なので、非常にゆっくりと走っている。バイクでそのペースに合わせるのはちょっと辛いものがある。
しかも、対向車が時折現れる。すると、離合するのに時間がかかる。ぶつからないようにぎりぎりの隙間を通り抜けていく。
途中で、完全に止まってしまった。どうも、私の前の車はバックしたがっているようなのだが、下り坂なので車と違ってバイクは簡単にはバックできない。それで、横をすり抜けて通してもらうことにした。これで、この車も私がいなくなった事で、バックできるだろう。
それからは、前に車がいなくなったので、自分のペースで走れたが、それでも、30km/h程度の速度だ。とてもそれ以上出せない。
しかしこれほど蛇のようにくねくねしている道路はなかなか無いだろう。
やっとセンターラインのある広い道に出た。国道439号線だ。これを右折した。
しかし、この時から、やばいと思った。雨が降り出したのだ。すでに路面は濡れていた。
少し走ると、雨は小雨から、本降りに近い感じになってきた。
と思ったら、すぐに止んだ。路面も乾いていた。雨はたいしたことが無かったようだ。
と思ったのは間違いだった。突然土砂降りになった。メッシュジャケットなので容赦なく雨が体に直接染みてくる。
いくつかトンネルをくぐったが、そのなかに、バイクが歩道で雨宿りしているのを見た。
これしか無いと、私も次のトンネルで歩道に乗り上げて、雨宿りすることにした。
雷鳴が轟き、まさしくバケツをひっくり返したような雨だ。トンネル出口を見ると、右の崖から滝のように水が流れ落ちていた。トンネル内は、ゴーゴーザーザーという土砂降りの音と、時折の雷鳴が響いてかなりの騒音になっていた。
リアボックスにいれていたタオルで手を拭いてから、スマホを取り出して見てみると、非常に狭い範囲で激しい雷雨となっているのが見えた。
今後の予想を見てみると、この雨雲はなぜか西に向かっていた。普通雨雲は西から東に移動するものだと思ったが。もしかすると台風が西の果てに来ているので、その方向に向かっているのかもしれない。
いつ頃通り過ぎるのかと予想を見ると、今進んでいる西方向に雨雲も進んでいるので、このままここで待っていると雨が止んでも、走り出したらまた雨と言う事になる。
今ならば、西に進んだら、数キロで雨雲を抜けられるようだ。
ということで、すぐにトンネルから出て、土砂降りの中走り出した。
前がよく見えないほどの土砂降りに久しぶりにあった。しかもバイクだ。ゴールデンウィークの時にも土砂降りにあった。どうも、四国では土砂降りに遭う運命なのか、単に四国という地形でこういう荒れた天気が起こりやすいのか。
あっという間に、ジャケットは言うに及ばず、メッシュパンツまでぐっしょりだ。靴の中もぐちょぐちょ状態だ。ところが、全然気持ち悪くない。それどころか、気持ち良いのだ。
汗でべたべたして、粘着テープをまとっているような状態だったのに、まるでシャワーを浴びているような感じなのだ。べたべたが取れて、とても気持ち良いのだ。
予想とうり10分も走って、いくつかトンネルを抜けると、今までの土砂降りが嘘のように晴れていた。
これには驚いた。そして、再び、灼熱の暑さが戻った。
とりあえず、バイクを止めて、雨でびしょ濡れになった機器をタオルで拭いた。バイクのボディの虫などがこびりついていたのが、綺麗になっていた。
そして、走り出した。確かに日差しが強くて、午前中以上の暑さなのだろう。でも、体はびしょびしょなので、それが、冷却剤の働きをしてくれて、そんなに暑くない。
暑くないどころか、気持ち良いくらいだ。
そして、行きに寄った道の駅肱川に再び入った。
トイレ休憩をして、飲み物を取った。時計を見ると16時半前だった。
そして、体調は完全に回復していた。まだまだ走れるという感じがした。あの土砂降りが功を奏したようだ。午前中の暑さで、どろどろになった体、とにかく気分が悪かった。もしかすると、熱中症だったかもしれない。それが、あの雨で、体が冷やされて、体調が回復したのだ。
行きにここまで6時間だった。だったら、後6時間で自宅まで帰れるということだ。計算すると、22時半くらに戻れるということになる。
ここで、今から宿に行って休んでも、明日は戻るだけだ。早朝6時に出たとしても、昼頃までかかるだろう。
それで、半日以上つぶれてしまう。ならば、このまま帰ってしまえ。という考えに短絡的に到ってしまった。
善は急げと、宿をキャンセルしてしまった。当日キャンセルなので違約金がかかるが、宿代+高速の休日割引で出費は宿泊した場合に比べて大幅に減る。キャンセル料など安いものだ。
後は、帰るだけだ。ただ、三崎港まで70kmほどだ。下手すると2時間ほどかかる。ということは、三崎港到着が18時半ということになり、乗れる船は19時半の便となる。大分着が20時40分。そこから2時間かかるので、22時40分。夜の走行になるので、おそらく23時頃の到着か。
もしも、18時までに三崎港に行く事ができたら、18時半の便に乗れるかもしれない。
そう思ったら、慌てて、NC700Sに跨がっていた。
つづく。
0 件のコメント:
コメントを投稿