2016年3月16日水曜日

HONDA VFR1200F 試乗

試乗したのはHONDA VFR1200F DCTだった。

高速を走るのには、リッターバイクのR1100RSが良いが、特に渋滞する下道では本当につらい。そこは、クラッチのないNC700S DCTが良い。と、2台のバイクで異なるため、できるなら1台にできたらいいなあと思っていた。DCTは良いソリューションだと思う。現在は、だんだんと採用車種が増えてきているが、私のように中古車で探すと、今のところVFR1200F DCTとなってしまう。ただ、270kgもある車重が気になっていたのだ。それで、一度試乗してみたいと思っていた。

ただ、残念ながら、ヘルメットにつけるカメラを持っていくのを忘れたので、動画が無い。残念だ。

店舗内にあったVFR1200Fを出してもらった。とても、270kgもある車体とは思えないほどに、バイクショップの店主は軽々と押してきた。

どうも、フリクションロスが少ない感じで、重たい車体にもかかわらず非常に押し引きが楽で、ちょっと驚いた。

WeBikeに記載されていた写真はなんだか汚くて、ちょっとどうかと思っていたが、現物の車両はとてもきれいだった。変にきれいに写真を撮られるよりも、がっかりが無いからいいのかもしれないが、アピール度は低い記載の仕方だ。

ということで、とてもきれいな車体にニンマリした。

記載されていた写真には、純正のトップボックスがついていたが、店舗内にしまうために、純正のグラブバーに交換しているという。つまり、トップボックス用のキャリアと標準のクラブバーと2種類がついてくるのだ。


ハンドルは、もともとはセパレートだが、バーハンドルに交換してある。こちらも元のハンドルがついてくるとのこと。中古車は、そういう純正部品がついてこないことが多いのに、なかなか良いことだ。

グリップヒーターもついていた。

さっそく、試乗させてもらうことにした。しかし、店舗前の3号線に乗り出してすぐに思った事は、まったく予想と異なっているという事だった。

270kgもの重い車体なのだから、どっしりとした乗り心地を期待していたら、出足もひょいと出て非常に軽いのだ。まるで軽量な250ccバイクに乗っているような感じだ。

それは、ハンドリングにも表れていて、ちょっと荒れた路面を通り過ぎると、ハンドルがとられてふらつく有様。

これはどうなんだ。

恐る恐るDモードで走っていたが、まっすく走っているだけでは、おとなしいもので、1200ccのバイクに乗っている感じは全くない。戦闘的なスタイルともあいまって、のんびりというよりは、遅い感じなのだ。

ちょっと、アクセルをひねってみると、エンジンは簡単に回転数が上がってビックリする。なのに、前傾姿勢なためか、速度感が無いのだ。いつの間に速度が出ている感じだ。

これは、ある意味面白くない。Bandit 1250Sで、2速全開加速を試したことがあるが、とてつもない加速感で、アクセルをひねる続けるのが恐ろしかった。

それが、VFR1200Fではあまり感じないのだ。アクセルは簡単に軽く回るのだが、それに追従した加速感無いのだ。これは違う違うと心の中で叫んでいた。

いつの間にか、車のいない道路に出てしまったので、ちょっとMTモードにして、2速全開を試してみようと思った。

で、アクセルをガバッとひねると、いとも簡単にアクセルは全開となり、それ以上回らなくなった。そして、あとからエンジン回転数が上がって、まるで250ccに乗っているような、本当にそんな感じで、タコメーターはあっという間にレッドゾーンに入って、リミッターがかかってふかなくなってしまった。

この時にも、アクセルレスポンスの悪さと、あまりの簡単なふけ上がりに驚いた。

試乗記などで、「大排気量車なので、アクセルをあおると、一気にレッドゾーンに駆け上がる」などと書いてあったら、「すごいなぁ。」と思うのだが、そしてその通りになっているのに、加速感がそれに追従していないので、面白くない。

乗っている間、270kgの車体重量は全く感じなかった。本当に軽いバイクに乗っている感じなのだ。それは、エンジンのふけ上がりと、加速感とのミスマッチもそうだが、車体の不安定さもその一因だろう。

あまりに、路面状況に過敏で、ひょこひょことしてしまうし、カーブに入って車体を傾けても、立ちが強くてハンドルを押さえていなければならない。そのために不安定なのだ。もしかすると、タイヤが減ってるのかと思った。

そんな感じで、予想もしないVFR1200Fに驚いたり、悩んだりしたが、気が付くと、知らない道を走っていて、いまどこを走っているのかわからなくなった。しかも、荷物はR1100RSのリアボックスにいれていて、持ってきたのは財布と免許証だけなのだった。スマートフォンを持ってきておれば、現在位置が分かったものを。

とにかく何か看板が無いかとぐるぐるまわっていたら、幹線道路ぽい道に出た。道路の青い道路看板を探したら、3号線を北に向かっていることに気が付いた。

それで、道沿いにあった広い駐車場の店舗に右折して入って、その中でUターンした。ここでは、かなりゆっくりと走ることになるが、慣れないバイクということと、なんとなく不安定で、ハンドルキレ角が少ないのか、やや大回りになった。小回りはしにくい感じがした。おなじDCTのNC700Sでは、リアブレーキを引きずって、アクセルを開き気味にして、コントロールするのだが、VFR1200Fではリアブレーキが効きにくい感じで、唐突にアクセルを開けると加速して立ち上がってしまうので、Uターンに手こずった。広い駐車場だったのでまだよかったが、ふつうの道では簡単にUターンはできそうにないと感じた。

青い看板に広川IC8キロとかかれていて、おそらく5、6キロも走ってきていたのだと気が付いた。3号線は、渋滞していて、エンジンは2000回転ほどしか回らない。にもかかわらず、気温が高いこともあり、ラジエターの電動ファンがウォーンと回り続けており、のろのろと走っていると下から炙られるように、熱気が上がってくる。

まだ、真夏でもないのに発熱はすごいものがある。これで、35度にもなる真夏だったら、どれほど暑いのか想像もつかない。

なんとか、元のショップに戻ってこれた。

試乗が終わって、感じたことは、DCTとしては初代のシステムなので、ATのソフトウェアがこなれていないのではないかということだった。

アクセルが、ワイヤーの無い電子式なので、非常に軽く回り、あまり反力を感じないからか、細かなコントロールがしにくく感じた。低速で、交差点を右折したが、エンストするかと思うほど、加速しない。慣れないせいだろうか。おそらく、アクセル開度とエンジンののツキが良くないからだろう。特にDモードだとそうなのかもしれない。

NC700Sでは、Dモーででもアクセルをガバッと開けると、それなりにギヤを低めに保って加速してくれたりするが、それがない感じなのだ。

特に、左手でレバーによるギヤ操作すると、ATモードなのにMTモードに勝手に移行していまうのは、どういうつもりなのだろうか。最初にこのシステムを設計した人は、ちゃんと試乗して確認したのだろうか。

現在の機種では、Dモードでギヤ操作しても、一定時間後に元のDモードに戻るようになっている。これが本当だろう。操作してるほうからすると、ATモードにしているのに、勝手にMTにかわたままになるというのは感覚的にずれている。

MTモードにしたければ、明示的にMTモードにするだろう。ちょっとギヤ操作したからと言って、ATモードに戻す操作をしなければならないというペナルティを受けにければならないというのはいかがなものか。

走行そのものは、軽く走れて問題ないと感じた。でも、私はどしりとした落ち着いた走りを期待していただけに、これは私に合わないと感じた。

バイクから降りたら、ジーンズが熱くなっていることに気がいた。VFR1200Fのフレームを触ったら火傷するくらい熱くなっていた。後で形状を調べたら、フレームがエンジンを囲むようなっていて、かなり熱がこもるだろうと思われた。

それに、おそらく試乗時間は30分はかかっていないと思うが、手に余計な力が入っていたのか、前傾姿勢のためか、肩が痛くなってきていた。おそらくは、前傾姿勢が影響したのではないかと思った。

バーハンドルで、少しアップライトになっているのでこれが純正のセパハンだったら、もっと疲れたかもしれない。

ただ、以前もつらいなぁと思いつつ、慣れたので、慣れるかもしれないが。

最近は、楽な姿勢のバイクばかり乗っていたのもあるだろう。

ハンドルを取られたりしたのでタイヤが減ってるかと思ったが、溝はしっかりあり、それどころかまだ新しいほうだった。ということは、そういう落ち着きのない走行のバイクなのだろう。

もちろん、このバイク固有の問題かもしれない。

どちらにしても、私には、このVFR1200Fは、合わないようだ。

店主はもとても気さくでいい人だった。「実は...」と言って、別のシートも持ってきてくれた。いままで使っていたシートは、オプションのハイシートだったとのことで、持って来たのが標準のシートだという。

ハイシートと言っても、足着きは特に問題なかった。私にはハイシートが合うようだ。逆に、標準シートだからと言って、そんなに低くなっているようには感じなかったが、比較すると確かに薄くなっていた。これでは、尻が痛くなるかもしれない。

しかも、標準シートは表面が異常に滑るうえに、前のほうが下がっているため、座っていると前にずりずりと滑ってしまうのだ。これでは安定しないだろう。VFR1200F国内仕様に乗るのなら、ハイシートに変えたほうがいいと思う。

せっかくなので、シート下を見せてもらった。ETCが付いていた。工具もついていた。シート下は、それでもう一杯で他のものを入れておくスペースは無い。

試乗の間に、店主はR1100RSの下取り価格を出してくれて、その価格も相当頑張ってくれていたので、本当だったら購入したかったのだが、これでは私は乗れないと思う。残念だ。


ショップを後にして、VFR1200Fで通った3号線を同じように北に向かって走って帰った。

途中、道が荒れていてVFR1200Fでハンドルを取られた箇所に来たが、R1100RSは何事もなかったようにスーッと通り過ぎた。

どう見ても、私にはR1100RSの乗り心地のほうがあっている。そして、アクセルも少しひねるだけで、ドカドカと加速していくのがアクセスレスポンスが良いと感じてしまう。

本当の意味で、トルクフルなエンジンとはどういうものかわわからないが、少なくとも私の感じでは、定速走行中に、アクセルをちょっとひねると、機敏に反応して、そのアクセルのひねり以上に加速する感じがするのがトルクフルなエンジンだと感じる。

R1100RSのエンジンは、まさしくそんな感じで、NC700Sも小粒ながらそんな感じがする。

対して、試乗したVFR1200F DCTは、そうではないのだ。加速感がないのだ。


帰りも、渋滞していて、先日のツーリングよりも距離は短かったのに、もっと長距離走ったかのように疲れた。

ただ、クラッチの左手は、先日のツーリングより楽だった。帰宅したら5時だったが、左手が痛いこともなかった。

ただ、渋滞も多かったためか燃費は、17.5km/lとあまりよくなかった。

2台体制を解消して、長く乗れる1台にしたほうがいいのではないかと思ってきているのだが、その1台がなんなのか私にはまだ決められないというか、見つからないというのが正しいのだろうか。

大体、私がどんなバイクを本当に欲しているのかすらわからない。困ったものだ。